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エッサイ

2013 / 05 / 03

ムダ爪を切る

ムダ爪を切る

「ムダ爪を切る」という格言を聞いたことがあるだろうか。ムダ骨を折る、ムダ飯を食う、というのはよく聞く。だが、ムダ爪の方は聞いたことがない、のは当たり前で、私が最近作った格言だからだ。

勝手に作るのもどうかと思うが、意味は、「自堕落な生活にきっぱりと別れを告げる」という意味だ。オリジナルにしては、われながら、よく出来ていると思っている。そして、こういうものには、必ずそれらしい由来があるが、ムダ爪の場合もきちんある。

これは本当らしいが、家人がいうには、忙しい人は髪がよく伸びる。ヒマな人は爪がよく伸びるとされるらしい。私は、どちらかというと、爪がよく伸びるのだ。私だけでなく、家の猫も爪がよく伸びる。事例はたったの二例だが、明らかにわれわれはヒマなタイプに属するから、ヒマと爪の関係は認めることにした。

そこで、ヒマに任せて伸びた爪を、エイッと切る。もう、こんなダラダラ生活はヤメだ!とばかり、ムダ爪を切るのだ。なんだか、爪のパチンとはじけ飛ぶ感じなんか目に浮かんで、小気味いい格言になった。

しかし問題は、しばらくすると、ムダ爪が再びじわじわと伸びてくることだ。あんなにきっぱりと決別したのにである。つまり、ダラダラ生活となかなか縁が切れないのだ。爪の方は自然現象で仕方ないが、これでは格言に矛盾が生じるから、「その一方で、断固として行ったことでも、なし崩しに崩れ、元の木阿弥に戻ってしまうこと」という解釈も追加することにした。

前者のムダ爪の適用事例は、就職が決まって、さりとて卒業論文に手をつけるでもなくブラブラしている4回生あたりに、「そろそろムダ爪を切ったらどうだ」と激を飛ばす。後者の元の木阿弥バージョンは、なかなか手の切れない男女の仲なんかにぴったりだ。「もう何度ムダ爪を切ったかわからないわ」などと使っていただければ、作者冥利に尽きる。

だが、どうしても、本当にムダ爪を切って、新生活をスタートしたい人はどうすればよいのか。ご安心あれ、「足のムダ爪を切る」という上級版を用意した。これならバチンとばかり、ムダ爪は遠くまで弾け飛んでいく。また、その効果も、手のそれよりはしばらく長持ちすること請け合いである。