長命寺
長命寺
長命寺(ちょうめいじ)は、近江八幡市の琵琶湖畔にそびえる長命寺山の山腹にあるお寺。JR琵琶湖線の近江八幡駅からでも、バスで20分くらいの場所にある。あたりは、昔、琵琶湖に浮かぶ島だったらしい。それが、干拓で、今は地続きになったのだ。
クルマの足がある人は、ほほ境内の近くまでクルマで行けるけれど、駅からのバスで終点で降りて、ふもとから歩く人は、ちょっとした覚悟が必要。八0八段ともいわれる境内までの石段が待ち受けているのだ。石段は、ところどころ傾斜もきつく、日ごろの運動不足がたたる人もいそう(境内まで、休憩を入れて20分?30分)。石段登りにチャレンジする人は、少なくともスニーカーくらいは用意した方がいい。とはいえ、汗をかいた分だけ、なんだかとってもご利益がありそうな気分になれる・・かも。
いい伝えによると、長命寺の歴史は、とても古い。第十二代景行天皇(けいこうてんのう 3世紀後半?4世紀はじめ)の時代に、武内宿禰(たけのうちのすくね)という忠臣が、この山で長寿を祈った。そのかいあって、宿禰は300歳まで長生きしたとのこと!その後、ここに来られた聖徳太子が、宿禰の長寿にあやかって、長命寺と名付けたのが、お寺のはじまりとか。そうした縁から、お参りすれば「寿命長遠」のご利益があるとされている。
そして、平安時代の終わりには、近江の守護だった佐々木定綱(ささき さだつな)の庇護をうけて、本堂、釈迦堂、薬師堂、護摩堂、宝塔、鐘楼などが作られ、今の伽藍(がらん)の原型が作られた(ただし、当時の社殿は戦国時代の兵火で焼け、今のものは、その後再建された社殿)という歴史がある。
さて、現代の長明寺に話を戻すことにしよう。
長?い石段道を、まだかまだかと登りながら、ようやく境内にたどりつく。と、目の前には、もう御本堂(重要文化財)が。そして、その右手には、立派な三重の塔(重要文化財)がそびえる。うーん、苦労して登ってきたかいがあった、という感じ。
そして、ふと後ろを振り向くと、眼下に琵琶湖の入江が見える。あれ、バスが着いたのは湖のすぐそばだったから、こんなに高いところ(標高約250M)まで登ってきたの?
長命寺のご本尊は、三つの観音菩薩さま。十一面観音菩薩、千手観音菩薩、そして聖観音菩薩。ただし、いずれも秘仏となっていて、お姿を見ることはできない。また、長命寺は西国三十三ヶ所札所の三十一番札所でもある。巡礼のお参りの人たちも絶えないのだ。
長命寺の見所は何といっても、そのすばらしい屋並(やなみ)の美しさ。本堂から左手方向に続く、三仏堂(堂内には、釈迦・阿弥陀・薬師の三仏が安置されている)、御法権現社(武内宿禰が祀られている)の、連続する檜皮葺(ひわだぶき 檜の皮でふかれた屋根)の屋根の美しさは、ちょっと他では見られない景色。下から見上げてもよいけれど、少し小高いところに建っている鐘楼(重要文化財)の脇あたりから見下ろすのが、絶景を手に入れるコツ。屋並の奥には、三重塔もそびえ建つ。
鐘楼は桧皮葺、入母屋(いりもや)造の美しい建物。こちらは逆に、境内から見上げるようにしてとらえた姿がベスト。鐘楼のそばには、お寺の総鎮守でもある太郎坊権現社がある。太郎坊とは、その昔、お寺にいた超人的な力をもった一人の僧侶が変じた大天狗のこと。たしかに、ここから見渡す琵琶湖の入江と、あたりののどかな田園風景は、大天狗となって、大空から下界を眺めているような気持ちにさせてくれる。
また、この太郎坊権現社の拝殿に、寄りかかるようにして鎮座する巨岩も見もの。この大岩は、修行をきわめた太郎坊が長命寺をなつかしく思って、京都の愛宕山(あたごやま)から飛ばしてきものだとされている。
こんな高いところに、立派な社殿がたくさん!と、苦労して石段を登ってきたかいがあったと納得のお寺なのだ。
<参考>
・滋賀県観光情報
・Wikipedia 長命寺