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旅歩き

2014 / 08 / 16

日吉大社

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日吉大社

日吉大社

比叡山坂本。言葉のひびきを聞いただけで、なんとく気持ちがひきしまってくる感じ。
JR湖西線の車窓から見える比叡山の山並みが、だんだん大きくなってきたと思ったら、やがて比叡山坂本駅に到着。
お目当ての日吉大社に行くには、京阪電鉄の坂本駅の方が近いことは知っていたのだけれど、まずはJRを利用してみることに。
というのも、初めて訪れる坂本の町全体の雰囲気を、しっかりと味わってみたかったから。

予想通り、駅から比叡山方向にまっすぐに伸びる道を歩いていくと、やがて右手に由緒ありそうなお寺が見えてきた。
ちょっと道草して門をくぐってみると、なんと、そのお寺は、延暦寺の開祖、伝教大師最澄ゆかりのお寺。
最澄が延暦寺を開いた後に、ご両親の御恩に報いるため、生誕の地に開いたお寺がこの生源寺(しょうげんじ)だとか。
境内には、最澄が赤ん坊のときに使ったとされる産湯の水をくんだ井戸もあった。

生源寺(最澄生誕の地に建つお寺)生源寺(最澄生誕の地に建つお寺)

早くも歴史の渦に巻き込まれつつ、なだらかな登り道を進んでいくと、京阪坂本駅を過ぎたあたりから、
いかにも、大社へと続く参道という雰囲気になってきた。比叡山の山裾はもうすぐそこだし、何しろ、
まわりを取り囲む一本一本の木が、いかにも神々(こうごう)しく聳え立つ感じなのだ。その木々の木陰が濃くなったあたりに、日吉大社の紅い大鳥居が見えてきた。

比叡山のふもとに鎮座する日吉大社の歴史は、およそ2100年前、崇神(すじん)天皇の時代にまでさかのぼる。
そして、全国3800あまりの日吉・日枝・山王神社の総本宮でもある。また、京都に都が移ってからは、
この地が都の鬼門(北東)にあたることから、都の魔よけ・災いをとりはらう社として、
さらに、伝教大師が比叡山に延暦寺を開いてからは、天台宗の護法神として尊崇されてきたという古い歴史を持つ。

実際、こうして足を運んでみると、文字でつづる以上の霊力の地、まさにパワースポットであることを、ひしひしと感じてしまうところなのだ。

左|入り口の鳥居の立派な額 / 右|参道を横切るように流れる川のせせらぎ左|入り口の鳥居の立派な額 / 右|参道を横切るように流れる川のせせらぎ

大鳥居をくぐって石橋を渡ると、さらに周りの山がせまってくるような雰囲気の中、道が続く。
「これは、たいへんなところだ・・・」―予想を超える広大さ、物音ひとつしない静かさに、次第に圧倒されてくる感じが。

やがて、西本宮の入り口とも言うべき楼門(ろうもん)が見えてきた。二階建ての立派な楼門をくぐると、
目の前に拝殿、そして、その後ろに本殿が。なんだか、駅からここまで、けっこうな道のりだったので、
とうとう本殿までやって来ました!という感じが(ちょっと不謹慎かな)。それにしても、まわりの空気は、おごそかのひと言。
本殿の欄干の左右には、恐ろしい形相の獅子が一対ひかえている。カメラの望遠レンズでのぞくと、
ますます迫力のお顔がアップに。このお顔は、ちょっと忘れられない・・・。

古代、神道のお社は、大きな岩や大木だったとか、よく聞く話だけれど、
本殿の後ろに控える天をつくような大木を眺めていると、そうした言い伝えがよくわかる気がしてきた。
ちなみに、ここ西本宮にまつられている神様は、大己貴神(おおむなちのかみ)。
大己貴神は、出雲神話に出てくる大国主命(おおくにぬしのみこと)の別名だとか。

そして、西本宮のすぐ横には、また別の神さまの本殿(宇佐宮本殿)がひかえている。
それもそのはず、日吉大社には、40ものお社があって、そのすべてを総称して「日吉大神」と呼ぶのだとか。とにかくスケールが大きいのだ。

左|こちらが、西本宮の御本殿(国宝) / 右|さすがの迫力です左|こちらが、西本宮の御本殿(国宝) / 右|さすがの迫力です

ここで、西本宮に別れをつげて、地図を見ながら、東本宮を目指すことに。道は細くなり、
まさにうっそうとした山道を歩いている感じに。そして、ところどころに、まわりの木々よりも太い幹の大木があると、
そうした木の幹には、しめ縄がまかれていたりして、お山全体が、お社のような雰囲気がする。

左|なんだか、神様が降臨されるような大木が / 右|こちらも、ご神木でしょうか。左|なんだか、神様が降臨されるような大木が / 右|こちらも、ご神木でしょうか。

道々のひとつひとつの発見に、ためいきをつきながら歩いていくと、東本宮の楼門が見えてきた。
こちらの楼門も、西本宮とほぼ同じような構え。そして拝殿の後ろに本殿という並びも西本宮と同じ配置。
ただ、少し違うのは、本殿と拝殿の横位置に、別の拝殿(樹下神社拝殿)が建っていること。そしてその拝殿の中には、きらびやかな御神輿が飾ってあった。

この御神輿もそうなのかわからないが、年に一度の行事としてその名を知られるのが、
日吉大社山王祭(さんのうまつり 4月12?15日)。平安京遷都で知られる桓武天皇が、日吉社に2基の神輿をご寄進されて以来、
1200年以上の歴史を有するという伝統行事。天下泰平・五穀豊穣を祈って、毎山王七社の7基の神輿が登場して、毎年、勇壮な神事が行われる。
ちなみに、こちらの東本宮にまつられているのは、大山咋神(おおやまくいのかみ)。大きな山に杭を打つ神様とのこと。
つまり、山の所有者、山をお守りする神様ということらしい。

左|こちらが、東本宮の御本殿(国宝) / 右|拝殿(樹下神社)には、立派な御神輿が左|こちらが、東本宮の御本殿(国宝) / 右|拝殿(樹下神社)には、立派な御神輿が

今日の見学は、朝早く足を運んだせいもあるのだけれど、途中、ほとんど他の観光客とすれ違うこともなく、
おごそかな大社の空気を胸いっぱい吸った感じ。こんな感じは、京都でいえば、下鴨神社、糺の森(ただすのもり)あたりで少し味わえることができるが、
こちらの日吉大社の場合は、比叡山の麓という大自然の中のせいもあって、さらにスケールが大きい気がする。

感動を胸に、再び駅へ続く参道に出てみると、なだらかに道は琵琶湖方面に下っている。
なんだか、とってもすがすがしい気持ちに―ちょっと御利益があったのかな。通りの脇には、
石垣にしっくい造りの塀が長く続いたりしていて、さすが歴史ある町という風情。途中、脇道にそれて、
有名な老舗のお蕎麦屋さん(鶴喜そば)をのぞいてみたのだけれど、残念ながら、まだ準備中の札が。ということで、坂本名物のおそばは、次回の楽しみに。

左|こちらが、有名なお蕎麦屋さん「鶴喜そば」 / 右|いかにも歴史のある町という感じ左|こちらが、有名なお蕎麦屋さん「鶴喜そば」 / 右|いかにも歴史のある町という感じ