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エッサイ

2013 / 05 / 03

やりたい仕事

やりたい仕事

昔のノートを整理していたら、こんなメモ書きが出てきた。十年ほど前、教え子の就職相談にのるために、書き残したものだ。

○○さんへ

みんなが、やりたい仕事につければ、これほど良いことはありません。しかし、全員がそうできないことは、少し考えれば当たり前ですね。いやむしろ、仕事という意味では、世の中のほとんどの人が、やりたくない仕事をしているはずです。その場合、私はこう考えることにしています。

まず、やりたくない仕事でも、誰かがしなければいけないことがあります。では、私がそれをやりましょう、ということ。次に、そういう積極的な姿勢で取り組むと、どんなつまらない仕事でも、創意と工夫が出てきます。雑にやるから、雑事になるのであって、もともと雑事などないという話も聞いたことがあります。

しかし、本当にやりたいことがあれば、これではおさまりません。そこで、ではなぜ、本当に自分がやりたい仕事ができなくて甘んじているのかを考えれば、要は、自分の能力がそこに達していないからです。

それを克服するには、日々の仕事にも汗を流しつつ、根気よく自分のやりたい仕事に向けて、誰が何を言おうと、密かに努力を積むことです。これは長い時間と忍耐が要ります。ただし、これまで言ってきたように、それが本当に自分の好きなやりたいことなら、必ず続きます。そして、それが本物になれば、まわりが放っておきません。日々の努力さえ怠らなければ、必ず自分の出番がやってくるものです。さて、これで答えになったでしょうか。

これは、教え子からもらった質問への返信メールを、プリントアウトして残していたものだ。なぜ、教え子へのアドバイスを、わざわざ自分のノートにまで貼りつけていたのだろうか。おそらく、これは私自身に対して差し出した手紙でもあったからに違いない。