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エッサイ

2013 / 05 / 03

ノイズ

ノイズ

あるマーケッターと話していたら、最近、しきりに得意先から言われることは、
「とにかくノイズを起こして欲しいんです」ということだそうだ。その話を聞いたときは、なるほどね、と思ったのだけれど、
しばらく経って、ちょっと違うんじゃないかな、と思うようになった。

この世界の人以外にはわかりにくいかもしれないので、ノイズについて少し説明をしておくと、
最近、盛んになっているコミュニケーション手法に、CGM(Consumer Generated Media)というのがある。
口コミやブログ、はやりのフェイスブックなどを使って、消費者自身がメディアとなって情報を発信することだ。
別に、BUZZコミュニケーションという言い方もあって、BUZZとは、ハチやアブなどがブンブンと羽音をさせる意味らしく、
それから言えば、まさにノイズということになる。

企業にすれば、自身の商品なり、キャンペーンの内容なりが、どんどん人の口の端にのぼることが、
プロモーション効果のように思えるのだろう。けれど、僕にはどうしても、
こうしたコミュニケーション手法は間違っているような気がしてならない。人がいろいろ評価してくれたり、
噂してくれるのは、情報の発信者としてはありがたくもあるのだけれど、それはあくまでも結果であって、それを目的にしたような発信の仕方は、やはり邪道だと思う。

うまくいってもいかなくても、また、それがコミュニケーションの世界でなくとも、
プロはちゃんと自分で、自分の行く先に責任を持つべきだと思うからだ。
「良くも悪くも盛り上がったね」などということが許されるのは、素人の飲み会の席くらいで、コミュニケーションのプロが使ってはいけない言葉だと思うのだ。

また、それは、ときどき、首尾よく盛大に爆発することもあるけれど、なんだか花火の後のさびしさのように、後に続くものがないのも気になるところだ。

商品の作り手や情報の発信者が、たんに種火だけを付ける役割に徹していると、やがて、自分たちの畑は荒れ放題ということになるのではないだろうか、と危惧する。