散歩の道すがら、不思議なことに気づいた。秋も深まりつつあるというのに、家の軒先に大きなヘチマが何本もぶら下がっている。
その隣の家には、キンモクセイの花が咲き誇り、甘い香りを漂わせている。川沿いのイチジクの木をよく見ると、枝にいくつもの青い実をつけている。
そういえば、私の家の庭のサザンカは、今年は早々と花を咲かせた。
ヘチマの実がなるのは八月、キンモクセイの花は九月下旬から十月上旬にかけて、イチジクの実は八月かせいぜい九月、
サザンカの開花は十一月から十二月ころだ。夏から秋にかけての実や花は、夏を引きずり、冬に咲く花は、一気の寒さにあわてて開花した。
そんなところかもしれない。
小さい秋見つけた、どころか、年々、春も秋も小さくなり続けている気がする。北海道ではコシヒカリがとれ、
佐渡では、りんごとみかんが両方とれるようになっているそうだ。日本全体が、境目なく、暑さと寒さだけで成り立つ土地柄になっている証拠だろう。
CO2の上昇による地球温暖化について警鐘を鳴らし続ける東大の山本良一先生に初めてお会いしたのは、今から十数年前のことだ。
ある講演会場で、火を吐くような口調で、地球温暖化の危機について叫び続ける先生の姿に圧倒されてしまった。
失礼ながら、そのときの印象は、常人ではない感じを受けた。
知られているように、わずかな気温上昇が、地球全体の気候変化を極端なものにする。
今年の日本を見ればさもありなんだが、山本先生は、その気温上昇の限度を2℃とされている。
恐ろしいことに、このままのCO2排出量が続けば、計算の上では、2032年がその地獄の門の入り口にあたる年になるらしい。あと20年もない。
最後は精神を崩壊させて亡くなった、哲学者ニーチェ(1844?1900)について、
「ニーチェという男は、気違いのようになって常識を説いただけだ」という言い回しがある。
今や、原発の問題にかまけて、CO2の排気については、もう誰も何も言わなくなった。自然はちゃんと危険信号を送っている。気が狂っているのは、僕たち人間の方かもしれない。