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ものづくり

2014 / 08 / 16

浜ちりめん

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浜ちりめん

浜ちりめんの写真

浜ちりめん

「ちりめん」という言葉は、きっとどこかで聞いたことがあるはず。でも、「ちりめんって、こんな織物だよ」と、自信をもって答えられる人は、どのくらいいるだろう。

ではまず、第一問。―ちりめんの糸は何? 正解は、生糸。「ちりめん」というから、何だか木綿糸のような気がするが、それは間違い。

そもそも、ちりめんを漢字で書くと、「縮緬」と書く。けっして縮綿ではない。そして、この緬という字の意味は、細く長い糸の意味、つまり、縮(ちぢ)んだ細く長い生糸から織られているのが、ちりめんなのだ。そして、その布の表面は光沢があり、細かく波うった感じ。文字通り、表面が少し縮んだ感じなのだ。

ちなみに、木綿糸で、同じような工程をへて、作られる織物を「ちぢみ」と呼ぶ。それは、別名、クレープとも呼ばれ、代表的な商品は、夏の季節に人気のステテコの素材を思い出してもらえばよい。

では、生糸の「ちりめん」も木綿糸の「ちぢみ」も、なぜ、布の表面が「ちぢんだ」風合いになるのだろうか。そのヒミツは、糸を織るときの、ヨコ糸にある。タテ糸はふつうの糸なのだが、ヨコ糸は、縮緬の場合、なんと1メートルあたり3000回もの撚(よ)りがかけてあるそうだ。そして、精練とよばれる工程で、生糸の成分の4分の1が洗い流され、生糸の撚りが元に戻ろうとして、縮むというわけ。この縮む力と4分の1の空間によって、布の表面に、波打ったようなシワができ(このシワを「シボ」ともよぶ)、あのちりめん独特の風合いのある絹織物となるのだ。

そして、琵琶湖の北東、長浜の一帯で、昔から作られてきたちりめんが、浜ちりめん。長浜の浜を取って、浜ちりめんというわけ。

では、どうしてこの湖北地域で、ちりめんがたくさん織られるようになったのか。ひとつは昔養蚕がさかんで、原料の生糸が豊富にあったこと、もうひとつの答えのカギは水にある。さっき、ヨコ糸に撚りをかける説明をしたけれど、この撚りをかけるときに、途中で切れてしまわないように、水を使って生糸を湿らせた状態にしておく。この時使われるのが、近くにそびえる伊吹山から流れてくる豊富な地下水なのだ。

さらに、精練の過程で活躍するのが、琵琶湖の水。琵琶湖の豊富な軟水が、浜ちりめんをしなやかに仕上げてくれるのだ。また、琵琶湖の湖面を伝わってくる適度な湿り気が、強く撚りをかけるときにも糸を切れにくくしてくれる。

こうした中、「こんなところにも、ちりめんが使われているんだ・・・!」と、声をあげてしまいそうな新しい商品も、たくさん生まれている。たとえば、写真のような、とってもカラフルで、可愛らしい「しずく袋」とよばれる商品。しずくのように丸くて愛らしい手提げ袋で、滋賀に由来の大津袋をヒントにデザインされたものだ。

大津袋は、その昔、大津から京都に米を運ぶ米袋から考案され、茶道具の棗(なつめ:抹茶をいれる茶器)を包む袋として使われてきたもの。このしずく袋は、芯(しん)地を使ってないので、コンパクトに折りたたむことも可能で、生地は、正絹使いの「浜ちりめん」と肌触りのよい浜ちりめんの新素材。そして、なんといってもその特徴は、結んだ時のウサギの耳の様な結び目と、物をいれたときのしずくの形のかわいらしさ。これまでとは違ったちりめんの楽しみ方ができそう・・・。

「しずく袋」の写真「しずく袋」