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旅歩き

2014 / 08 / 16

鶏足寺(けいそくじ)・己高閤(こうこうかく)・世代閤

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鶏足寺(けいそくじ)・己高閤(こうこうかく)・世代閤

鶏足寺(けいそくじ)・己高閤(こうこうかく)・世代閤(よしろかく)

鶏足寺(けいそくじ)は、湖北の古いお寺。でも、鶏足寺って、お寺の名前、ちょっとおもしろいと思いませんか。
鶏(にわとり)の足― どうしてそんな名前に?

そこでまずは、その名前の由来から。もともとの寺のおこりは、奈良時代、
あの東大寺の建立にも功績のあった行基(ぎょうき 668?749年)と、泰澄(たいちょう 682?767年)というお坊さんが、
近江の国の鬼門にあたる己高山(こだかみやま)に十一面観音をまつり、常楽寺というお寺を草建したのが始まりとか。

その後時代をへて、延暦寺を開いた伝教大師最澄(767?812年)が、あるとき、行基菩薩の聖跡を慕って、
このあたりまで来られたおり、不思議な鳥の声とその足あとに導かれて進むうち、すっかり朽ち果てていたお寺の跡に、
十一面観音のお像を見つけたのだそう―これが、鶏足寺の名の由来らしい。

その後、お寺は、室町時代には僧坊百二十宇と記録されるほどの大伽藍(がらん)を誇った大寺院に。
ただ、今は、昭和八年に焼失してしまった本堂をふくめ、己高山の山中に、いくつかの建物跡や墓地庭園などの跡を残すだけになってしまった。

では、お寺の建物がなくなったのに、どこを見るの?ということになってしまいそうだけれど、ご安心あれ。これが見応えじゅうぶんなのだ。

鶏足寺といえば、有名なのが、ご本尊の十一面観音像(重要文化財)。このお像をふくめて、
かつて鶏足寺にあったいくつかのお像は、己高閣(ここうかく)、世代閣(よしろかく)という宝物館に納められている。

といっても、初めての人には、この二つの宝物館と、鶏足寺、己高山などの位置関係がよくわからないかもしれない。そこで、あたり一帯の観光案内図を見てみよう。

案内図の右上、十一面観音像のお顔のあたりにあるのが、鶏足寺。
ただし、それは、かつて鶏足寺の本堂などがあったところとは違って(もともとの鶏足寺跡は、己高山の頂上に近い、もっと標高の高いところにあった)、
飯福(はんぷく)寺とよばれた鶏足寺の別院のあったところ。このあたりは、もみじの名所で、両側をもみじの木々に囲われた石段を登って行くと、やがてお堂が見えてくる。

さて、もう一度、鶏足寺の宝物館、己高閣、世代閣の話にもどると、二つの宝物館があるのは、案内図のほぼ中央左あたり。
大きな駐車場もこのすぐ近くにある。現在、これら宝物館のある場所は、與志漏(よしろ)神社とよばれる神社の境内で、宝物館のひとつ、世代閣という名前もここからきている。

左|鶏足寺のある古橋周辺の観光案内図 / 右|鶏足寺(旧飯福寺)お堂左|鶏足寺のある古橋周辺の観光案内図 / 右|鶏足寺(旧飯福寺)お堂

己高閣は、昭和38年(1963年)に、鶏足寺の宝物館として建てられた。
中には、本尊の十一面観音菩薩像や七仏薬師像などのお像が納められている。
十一面観音像は、平安時代前期の作とされ、渡岸寺(どうがんじ)のお像とくらべると、とても素朴な感じ。
けれど、どっしりとしたそのお姿は、十一面観音本来の、人々の苦しみを救い、あまねく願いをかえてくれるというお力を、しっかりとお備えの感じがする。

己高閤己高閤

脇に並んでいる七仏薬師のお像も、それぞれにお顔がちがって、とてもかわいらしい。
この七仏薬師は、かつて鶏足寺の別院だった法華寺(ほっけじ)のご本尊だったもの。
法華寺といえば、関ヶ原の戦いで敗れた西軍の総大将、石田三成が幼いころ、この寺のお小姓をしていて、そこで秀吉にひろわれた話でも有名。
三成は、寺に立ち寄った秀吉に、最初はぬるめのたっぷりのお茶をさし出した。そして、二番目は少し熱く、
最後は、少しの熱いお茶を出して、秀吉を感心させたという。また、己高閣には、その他、不動明王、多聞天など、二十ほどのお像がお祀りしてある。

もうひとつの宝物館、平成元年に開館した世代閤には、ずらりたくさんのお像が並ぶ。展示室に足を踏み入れると、
ちょっと圧倒されるくらいの感じがするくらい。ここに展示されている薬師如来(天平時代 重要文化財)は、
やはり行基が開いたこの地のお寺、戸岩寺(といわじ)のご本尊だったものだ。

そして、もうひとつ見逃せないのが、魚籃観音(ぎょらんかんのん)のお像。
その名前のとおり、左手に、魚のはいった魚籠をさげていらっしゃる。何でも、中国、唐の時代に、観音さまが、
魚をあつかう美女に姿を変えて、法華経をひろめられたという言い伝えに由来するお像だそう。
右手には、蓮の花のつぼみをかかげられ、そのふくよかなお顔は、とてもやさしい。その他、世代閣には、
本尊である薬師如来の守り神である十二神将像(うち三躰は重要文化財)など、いくつかの貴重なお像や宝物類がおさめられている。

左|世代閤 / 右|宝物館から鶏足寺へ向かう途中は、のどかな田舎道が続く左|世代閤 / 右|宝物館から鶏足寺へ向かう途中は、のどかな田舎道が続く