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旅歩き

2014 / 08 / 16

西の湖

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西の湖

西の湖

琵琶湖には、内湖(ないこ)と呼ばれる、琵琶湖にくっついた小さな湖がいくつかある。
昔は、今よりももっとたくさんあったのだそうだけれど、農地を広げるための戦後の干拓事業で、その多くが失われてしまった。
そんな中、近江八幡市の郊外に広がる西の湖は、今に残る内湖の中で最大のもの。

黄色い菜の花と、散り残った桜が美しいおだやかな春の日、水郷案内の船に乗って、湖に出てみた。
西の湖の面積は、221ヘクタール。周囲を徒歩でまわれば、2時間はかかるという広さ。
一帯には、琵琶湖全体の6割強にあたるといわれる約100ヘクタールのヨシ原が広がっている。

水郷めぐりの船の出る船着き場水郷めぐりの船の出る船着き場

市内からクルマで10分くらいのところにある船着き場に到着すると、思ったよりもたくさんの船が岸辺につながれていた。
近江八幡市内には、こうした水郷案内の観光船着き場が4つあるとか。ただ、こんなにたくさんの船も、気候の良い季節の休日には、どこも予約で満員だそう。
そして、船をよく見ると、手漕ぎ船と、動力船の2種類がある。手漕ぎ船は、風がある日などは、湖をめぐるのに少し時間がかかるそうで、今回は動力船に乗ることに。

低い屋根に頭をぶつけないように乗り込んで、さっそく一番景色のよさそうな舳先(へさき)の座布団をゲット。
船がすべり出すと、さきほど桟橋からみた湖の景色とは全然ちがって見える。水面はほぼ目線と水平に。
そして、岸辺のヨシも手にとるように近くを通り過ぎてゆく。西の湖の広い部分に出るまでは、水路にあたる割と狭い湖面が続く。

両岸がヨシ原の中を船は進む両岸がヨシ原の中を船は進む

そのヨシの生えた水面の近くに、良く見るといくつか汚れたペットボトルが浮かんでいる。
これはマズイ、投げ捨てゴミかと思ったら、同乗の人の説明によれば、湖の鮒(ふな)をとる仕掛けだとか。
どうやら水面下の仕掛けがあって、そのウキ替わりにペットボトルが使われているらしい。

左|鮒をとる仕掛けのウキ替わりのペットボトル / 右|かわいいカモさんもお散歩中左|鮒をとる仕掛けのウキ替わりのペットボトル / 右|かわいいカモさんもお散歩中

やがて水路を通り抜けた船は、西の湖の広い水面へ。まるで、一気に開けた湖面の景色は、大海原に出た感じ。
ぼんやりとした春霞の中、岸辺の向こうのなだらかな山々の景色が、まるで山水画のように美しい。

手前に広がる西の湖と向こうの山々(一番手前が安土山、右手後方が観音寺山)手前に広がる西の湖と向こうの山々(一番手前が安土山、右手後方が観音寺山)

大きな琵琶湖本体の景色も雄大だけれど、こうしてぐるっと見渡せるくらいの景色も、湖らしくていい。
遠くの岸には、一人カヌーをあやつる人の姿も見える。そういえば、ここに来るまで何人か、湖面に糸を垂れる釣り人を見かけた。
話では、鮒が産卵期を迎えたこの季節が、大物が岸辺に寄ってくる一番のチャンス時期なのだとか。景色ものんびりだし、
湖に集まってくる人たちも、のんびり。これが、JRの駅から数十分の距離にあるところだとはとても思えない。

やがて船は、西の湖を離れ、長命寺川方向へ。ここからは、港へ向かう岐路となる。そうそう、水郷めぐりを締めくくる前に、
忘れてはいけないのが、途中にある権座(ごんざ)島のこと。権座島は、湖に浮かぶ離れ小島のひとつ。
100メートル四方くらいの小島だけれど、ここに船で通って、日本酒の原料となる酒米が作られているのだ。
そのお酒の名前は、生酒『權座(ごんざ)』。毎年三月に、新酒おひろめの会も開かれるそう。
これは、日本酒党には、ちょっと聞き逃せない情報かもしれない。

水郷めぐりの時間は、コースによっていろいろだけれど、今回は一時間半くらい。
午前中早めの便に乗って岸に上がると、すっかり陽も高くなっていた。

これが酒米を作っている権座島の水田地これが酒米を作っている権座島の水田地