旧豊郷小学校
旧豊郷小学校
豊郷小学校の名前は、ある人たちにとっては、たぶん滋賀県下で、もっとも知られた名前かもしれない。
というのも、テレビの深夜アニメ「けいおん!」で、主人公たちが通う高校の校舎が旧豊郷小学校とそっくりなことから、
いわゆる「アニメ聖地巡礼」の地として、今も訪れるファンが絶えないところだからだ。
ブームが起こったのは2009年の春ころからで、今でも、年間にざっと5万人のファンが訪れると言う。
とくに夏休みなどの最盛期には、校舎前の駐車場がいっぱいになるほどだそう。
小学校があるのは、JR琵琶湖線の稲枝(いなえ)駅から、クルマで十数分の場所。遠くには、伊吹山や鈴鹿の山々が望める。
その名前のとおり、ほんとうに豊かな郷(さと)が広がる一帯だ。
豊郷町の役場をすぎて間もなく、見えて来ました、すてきな建物が。旧校舎を建てたのは、
このサイトでもおなじみの建築家、ヴォーリーズさん。自分が小学校時代に過ごした建物をちょっと思い出してしまって、
こんな校舎で6年間を過ごせたならなあ・・・、と思わずため息が。
中央の玄関から中に入ってみる。今はもう使われていない校舎かと想像していたら、意外にも、
子供たちが廊下を駆けている。よく見ると、一階には昔の教室などを利用して、町の図書館や子供たちが過ごすスペースがとられているよう。
ちゃんと現役なんだ、この校舎。
二階へと階段の方へ向かうと、階段の手すりに、ウサギとカメのブロンズ彫刻が置かれているのに、びっくり。
しかも、ひとつひとつの彫刻が、みんな違うポーズ。階段の手すりだから、まさに坂道を競争して登るウサギとカメ。
う〜ん、アイディアだなあ。しかもどの階段にも、いるいるウサギとカメが。こんな楽しい階段の小学校、どこにもないのでは。
二階の教室は、今は使われていないよう。鍵がかかっているので、教室の中には入れないけれど、
廊下の窓ガラスからのぞくと、やっぱりなつかしい雰囲気。教室には学年とクラスが書かれた、見慣れた黒い木の札が。
思わず、自分の小学校時代のクラスをさがしてしまう。理科室っていう札もなんだかなつかしい。
しばらく二階を歩いているうちに、だんだん、自分の出た学校を訪れているような気がしてきた。
ちょっとミニチュアみたいな階段、だれかがひっくり返した絵の具のシミなんかが付いた廊下の長板。
そういえば、こんなだった気がする手洗い場のタイル。
ひとつひとつにため息をついているうちに、あっという間に一時間近くがたってしまった。
なごり惜しく、階段を下りて一階に行くと、また、元気な子供地たちの声が聞こえてきた。
この子たちが、また大人になってこの小学校を訪れて、「あっ、この廊下のシミ、僕のこぼした絵の具だ」なんて、きっと言うのだろうなあ。