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ものづくり

2014 / 08 / 16

彦根漆器

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彦根漆器

コーヒーを点てる楽しみと飲む楽しみを合体させたドリッパーセット (chantoシリーズ)コーヒーを点てる楽しみと飲む楽しみを合体させたドリッパーセット (chantoシリーズ)

彦根漆器

漆器は英語でJAPAN。つまり、漆器は日本を代表する伝統工芸。もちろん、漆を使った製品を生んだのは、日本だけではない。ただ、その質の高さを、ここまで工芸的に高めたのは日本だけ。だからこそJAPANなのだ。

けれど、その漆製品も近年は、安くて手軽にあつかえる化学樹脂の製品におされ、私たちの生活まわりから消えつつある。もちろん、伝統工芸だからと、できるだけ保存しようとしても、長続きするものでもない。それよりもむしろ、ほんとうの漆の良さを知ってもらい、自然なかたちで日常生活の中に取り入れてもらうのが一番。

漆の特徴のひとことでいえば、強いということ。たとえば、熱に、水に、酸やアルカリ、そして衝撃にも強い。だから、昔から、塗料としてだけでなく、接着剤などとしても使われてきた。また、天然の塗料なので、毒性もない。

そして、もうひとつの特徴は、何といっても、その深みのある美しさ。幾重にも塗り重ねられた漆ならではの重厚な美しさは、とうていプラスチックなどの化学製品で真似することはできないもの。

そうした漆製品の伝統技術は日本各地に伝えられてきたが、ここ滋賀県の彦根地区にも、それが脈々と受け継がれて来た。

彦根漆器の生産品の中心は、仏壇づくり。戦国の昔、鎧(よろい)かぶとを作っていた漆塗りや蒔絵(まきえ)、かざり金具の職人たちが、江戸時代に入って、戦(いくさ)が減って、仏壇づくりへと仕事を移していったのがそのおこりだ。以来、その伝統は受け継がれ、1975年には、仏壇・仏具の主要生産地として、全国で初めて国の伝統的工芸品に指定された。

漆器づくりの特徴のひとつは、その制作工程のちがいによって、いくつかの職人の手を経て行われること。例えば仏壇づくりでいえば、木で本体を作る木地師(きじし)、仏壇内の寺院屋根を組み合わせてゆく宮殿師(くうでんし)、装飾彫刻をほどこす彫刻師、漆を塗る漆塗師、金粉、銀粉、貝などを蒔(ま)くことで美しい蒔絵をほどこす蒔絵師(まきえし)、仏壇内に装飾される金具を仕上げる錺金具師(かざりかなぐし)、金箔(きんぱく)を張り付ける金箔押し師(きんぱくおしし)の、多数の職人の手をへて完成される。

「しずく袋」の写真左|抹茶やカフェオレなどに使える大型(13cmx8cm)カップ (chantoシリーズ)
右|いろいろなカラーバリュエーションが楽しめるトレイ (chantoシリーズ)

最近では、そうして長年つちかわれて来た仏壇づくりの伝統技術を生かして、私たちの今のライフスタイルに合った漆製品を作る動きもさかんになってきた。

そのひとつが、写真のような、とてもカラフルなカップやトレイ。「chanto(しゃんと)」と名付けられたシリーズ商品は、彦根の漆器技術とプロダクトデザイナーの島村卓実さんのデザインによって生み出されたもの。これなら、私たちの生活の中に、まさに「しゃんと」収まって、和洋がぴったり合ったライフスタイルを演出してくれそうだ。