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旅歩き

2014 / 08 / 16

沖島(おきしま)

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沖島(おきしま)

沖島(おきしま)

琵琶湖に浮かぶ島でよく知られているのは、湖北に浮かぶ竹生島(ちくぶじま)かもしれない。
ただ、竹生島に人は住んでいない。神の住む島として昔からあがめられた竹生島には、人は住んではいけないきまりに。

竹生島が神の島なら、沖島は人々のくらす生活の島。それは、湖に浮かぶ島の中で、
日本でただひとつの人の住む島でもある。人口はおよそ350人。そのほとんどが漁業に関係した仕事で生計を立てている。

沖島写真1

島へ渡るには、近江八幡市の堀切(ほりきり)港から、平日で11便の船が出ている。
船は、島の人々の生活船でもある。港から島までの乗船時間は、わずか10分くらい。
ただ、観光で訪れる人が気をつけなければいけないのは、JRの近江八幡の駅前からバスを利用した場合、
堀切港まで30分をこえる時間がかかること。船に乗っている時間よりも、駅からバスで港に向かう時間の方が多くかかることに注意。

それでも、湖の上を連絡船で行くのは、やはり爽快。遠ざかる堀切港と、その反対にぐんぐん近くなる沖島の島影が、同時に楽しめる。

港から島に上がると、やがて気づくことがある。たくさんの自転車が目につくことだ。実は、この自転車こそが島の主要交通手段なのだ。
そして、クルマは軽トラックが一台あるきりだそう。島の周囲が約7km弱と、自動車で走り抜けるほど島自体が大きくないのと、
自動車が走れるような道幅の道路もないから、というのがその理由。とくに、後輪が二つ付いた、頑丈そうな三輪車がたくさん目につく。
荷物を積んで、起伏の多い島の道を行くには、これが一番なのに違いない。

左|こんな自転車が、島のあちこちに。 / 右|猫ちゃんも多い島なのだ。左|こんな自転車が、島のあちこちに。 / 右|猫ちゃんも多い島なのだ。

島の見どころは、何といっても素朴な島の人たちの生活ぶり。しばらく歩いているうちに、
「何かちがうぞ」という雰囲気が伝わってくる。漁業でくらす島らしく、道端や、家の庭、
ちょっとした空き地のようなところに、使い古した漁具や(修繕中なのかな)、なんだかわからない荷物や、要らなくなったものなどが山積みに。
「大型ゴミは決められた日に」なんて、きっちりした私たちのくらしとは、ちょっと違う。
そして、そんな人々の生活風景が、なんとものんびりユーモラス。すれ違うおじさんやおばさんたちも、セカセカしてなく、
「私たちのくらしは、昔からこうなの」といった表情。

左|ゆっくり、のんびり。いいなあ、こんなくらし。 / 右|こちらは、湖で洗いもの?左|ゆっくり、のんびり。いいなあ、こんなくらし。 / 右|こちらは、湖で洗いもの?

夏、6月の中ごから9月の初めのころまで、この島にとっておきの魚が上がる。
その名は、ビワマス。体長は40?50センチ。ビワマスは、琵琶湖の北、水深のふかいところに棲む。
大きさは、ふつうのもので40?50センチくらい。大きなものなら70センチにもなる。もちろん、名前のとおり、琵琶湖にだけすむ固有種。

夏場は水温の低い水深20mくらいのところを、コアユやエビを追って回遊する。そこを狙うため、水揚げはどうしても気まぐれに。
でも、夏のシーズン、予約を入れて、沖島をたずねると、このまぼろしの味覚を楽しむことができる。

獲れたてのビワマス獲れたてのビワマス

のんびりとした島巡りの後のおみやげは、連絡船の船着場の近くにある市場で。
地元でとれた魚を加工した商品の売店がある。おすすめは、何といってもエビ豆
自慢は、エビの新鮮さと、豆の数にくらべてエビの数がたくさんなこと。ふつうのエビ豆は、
大豆の中にエビが入っている感じだけれど、ここのエビ豆はその逆。エビの中に、ちらほら豆が顔をのぞかす。
そして、新鮮なエビのシャリシャリ感も最高。お家に帰って、熱いご飯といっしょにいただくと、
みずうみの波間に浮かぶ島影を、きっと思い出しそう。

お豆は、エビの中にかくれている?お豆は、エビの中にかくれている?