昨年の暮れ、持ち運び用のパソコンをアップルのブックエアーに替えた。その電源がもうひとつ欲しくなって、
正月明けに、京都駅の量販店まで出かけた。大型店なので、欠品のことなど考えずに行ったら、在庫切れだった。
その足で、駅前の別の量販店に行くと、そこもやはり在庫切れだった。正月休みに押しかけた客で、売り切れになってしまったとのことだった。
電源くらいなら、すぐに手に入るだろうと高をくくっていた私が、唖然としているのを見かねたのか、
応対の店員が、「お急ぎなら、ネットのアップルストアで買われたらいかがですか」と教えてくれた。
家に帰って確かめると、在庫もちゃんとあり、申し込んだ翌々日には送ってきた。
寒空の中、二店も巡ったことが、ずいぶんと損をした気分になった。
それから数日後、また同じような体験をすることになった。ときどきだが、
昔、撮りためたスライドを、講義で使いたくなることがある。全部、データにしてくれるサービスもあるようだが、
枚数を考えると、けっこうな金額になってしまう。
ネットで検索してみると、スライドフィルムをデータに変えるだけの専用スキャナーがあることがわかった。
京都駅に出るついでに、また、くだんの量販店をたずねてみると、「そういった専門的なスキャナーは置いていません」とのつれない返事。
えっ、だって、テレビだって、デジカメだって、不必要なほどたくさん並んでいるのに、
僕のスキャナー一個、並べるスキ間はないの、と腹立たしくなった。もちろん、このスキャナーもネットですぐ購入できた。
考えてもみれば、大きな駅ビルの数階を占領している量販店といっても、モノであるかぎり、
品揃えや在庫数には限りがある。しかも、私の欲しかったスキャナーのように、
人々のニーズが多様化している今日、すべてに対応しようとすれば、駅ビルが何個あっても足りないことだろう。
ちょっと待てよ。これは、どこかで見て来たような風景だ。そう、家電量販店が出来たおかげで、次々とつぶれていったのが、
品ぞろえの悪い町の小さな電気屋さんだった。そして今また、その大型量販店そのものが、ネットの品揃えにかなわなくなって来ているのだ。
圧倒的なネット通販の力を見るにつけ、やがて、駅ビルの○○電気も、町の電気屋さんと同じ道を、これからたどって行くような気がしてきた。