検索アイコン

エッサイ

2014 / 08 / 07

「困った」の解決

「困った」の解決

多人数で机を囲んだ企画会議などで、ときどき、すっかり煮詰ってしまうことがある。予算もあまりなさそうだし、
メンバーから出されるそれぞれの意見も堂々巡りで、どうも肝心なところに手がとどかないまま、時間ばかりが過ぎていく。

そんなとき、アイディアの基本は、ほんとうに困っている人の手助けをしてあげることじゃないかな、と思う。例えば、困っているのは他人なのだから、
他人の気持ちは、なかなかこちらには伝わらない。だからリサーチがある。リサーチの結果、「やっぱりそうだったのか」ということもあれば、
「えっ、そんなに大変だったんだ」と驚くことだってある。リサーチなんて信用できない、というのも自信過剰だし、リサーチに振り回されて、相手方が本当に困っているところを見失ってしまうのも考えものだ。

ただ、相手の気持ちがわかったからといって、すぐにうまい解決策が出るわけでもない。そんなことなら、当の本人たちが、すでにその手を思いついているはずだからだ。

八百屋さんに並んでいる切り身のスイカを見て思うのは、最初に、丸いスイカを幾つかに切りわけて売り始めた人に感心する。
最初はみんな、大きなスイカを丸ごと売っていたに違いない。それでは、買う側にとって、少人数で食べるには大きすぎるし、持って帰るのも大変だ。
また、小さく切って売れば、その分、丸ごと買うより値段も安くなる。さらに付け加えれば、赤いスイカの中身が見えた方が、熟れ具合もわかるし、食欲もそそられる。
これをマーケティングの施策で言えば、順番に、商品、価格、販促施策ということになる。「こうやれば、みんな助かるね」という気持ちが、見た目にも涼しく鮮やかな、スイカの短冊切り販売を生み出したのだ。

僕の中で、最近目についたヒット企画は、ミネラルウオーター「evian」のボトルケースだ。冷たい飲み物は、夏はどうしてもボトルの表面に水滴がつく。
そのため、バックの中に放り込むことができない。かといって別に手に持つのも面倒だ。だったら、市販のボトルケースを買えば、と思うかもしれないが、
そこまで大げさに構えることもないと思っていた矢先、evianにぴったりの、きれいなデザインのケースがおまけについていた。しかも330mlという特殊な容量のボトルだから、
ケースを優先するかぎり、この夏は、evianを買い続けることになるだろう。「困った」の解決は、けっこう強力な販促アイディアなのだ。