家の冷蔵庫が壊れた。まったく冷えないわけではないが、おそらくファンが故障してしまったのか、冷気が行き渡らないのだ。買い換えるしかないのだが、壊れた冷蔵庫を前に、妄想話をこしらえてみた。
某公共放送がよくやっている「くらしのヒント」風に作るとこうなる。
関西に住むSさんのおウチでは、この夏の猛暑を、できるだけ省エネで乗り切るために、こんな工夫をしていらっしゃいます(キャスター、Sさんとの挨拶もそこそこに、台所に上がりこみ、冷蔵の前へ。冷凍室の引き出しを開ける)。
「このビニールにくるんだ白いもの何ですか」
「主人のパンツです」
「パンツ・・・」
そう、Sさんのお宅では、毎朝、前の日から冷凍庫で冷やしたパンツをご主人がはいて、会社に通われているのです(自宅を出て、駅に向かうご主人の映像。実にさわやかそうな顔のアップ)。
「どうですか、やはり快適そうですね」
「いいですよ。ひんやりして」
「冷えすぎたりはしませんか」
「ええ、最初にはいたときは、びっくりしました」
通勤電車に乗り込むご主人の映像。周りの人たちは、氏のこの夏の暑さ対策に気づいた気配はない。会社近くの映像、同僚たちと挨拶をかわしながら、さっそうとビルの玄関へ向かうご主人。その姿を眺めながら、キャスターのエンドコメント。
「おウチを出てから、会社に着くまで、約一時間とちょっと。会社に着く頃には、普通の温度に戻っているそうですが、もっと暑い日には、ときどき会社の冷蔵庫も使って・・・」
以上、まったく現実性を欠いた私の作り話にすぎないが、冷静になって周囲を見渡すと、けっこうこの手の話も少なくなかったのが、再び節電を余儀なくされた今年の夏の暑さである。