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エッサイ

2013 / 05 / 03

再び異常な夏

再び異常な夏

家の冷蔵庫が壊れた。まったく冷えないわけではないが、おそらくファンが故障してしまったのか、冷気が行き渡らないのだ。買い換えるしかないのだが、壊れた冷蔵庫を前に、妄想話をこしらえてみた。
某公共放送がよくやっている「くらしのヒント」風に作るとこうなる。

関西に住むSさんのおウチでは、この夏の猛暑を、できるだけ省エネで乗り切るために、こんな工夫をしていらっしゃいます(キャスター、Sさんとの挨拶もそこそこに、台所に上がりこみ、冷蔵の前へ。冷凍室の引き出しを開ける)。

「このビニールにくるんだ白いもの何ですか」

「主人のパンツです」

「パンツ・・・」

そう、Sさんのお宅では、毎朝、前の日から冷凍庫で冷やしたパンツをご主人がはいて、会社に通われているのです(自宅を出て、駅に向かうご主人の映像。実にさわやかそうな顔のアップ)。

「どうですか、やはり快適そうですね」

「いいですよ。ひんやりして」

「冷えすぎたりはしませんか」

「ええ、最初にはいたときは、びっくりしました」

通勤電車に乗り込むご主人の映像。周りの人たちは、氏のこの夏の暑さ対策に気づいた気配はない。会社近くの映像、同僚たちと挨拶をかわしながら、さっそうとビルの玄関へ向かうご主人。その姿を眺めながら、キャスターのエンドコメント。

「おウチを出てから、会社に着くまで、約一時間とちょっと。会社に着く頃には、普通の温度に戻っているそうですが、もっと暑い日には、ときどき会社の冷蔵庫も使って・・・」

以上、まったく現実性を欠いた私の作り話にすぎないが、冷静になって周囲を見渡すと、けっこうこの手の話も少なくなかったのが、再び節電を余儀なくされた今年の夏の暑さである。