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エッサイ

2013 / 05 / 03

好きか、キライか

好きか、キライか

仕事にせよ、スポーツのようなものでも何でもよいのだけれど、ある成果を出すコツは、
それが好きなことなのか、キライなことなのか、そこがポイントだと思っている。
では、なぜ好きなことがうまくいくのかと言うと、答えはかんたんで、好きなことは長く続くからだ。

たいていのことは、長くやれば、必ず成果が出るし、うまくいく。例えば、教員をやってすぐに気づいたことだが、
試験とは、たんに教員にとって都合の良い手法でやっているに過ぎないということだった。ある問題を出して、
たくさんの学生を一か所に座らせ、時間を限って行うのがふつうの試験だ。そうではなくて、
各自バラバラに、散歩してもよいし、寝そべってもよし、時間は好きなだけ与える、ということで試験をやったらどうだろう。
たぶん、ほとんどの学生が正解をもってくるだろうが、試験をやる方はたいへんだ。

逆に、これから言えることは、自分はこの方面は向かない、能力がない、と学生時代に思っていたことでも、
案外、もう一度やってみたら、好きで長続きするものが出てくる可能性もある、ということになる。
また反対に、学生時代の試験はよくできたはずなのに、社会に出てみたら、実は、その方面の能力はあまりなかった、
ということも起こるかもしれない。いよいよ無制限一本勝負になったとき、好きなことだったので延々と続けていたら、
ライバルたちはしまいに脱落していって、自分だけが勝ち残ったということもじゅうぶん起こりうるのだ。

どうして、こんなことを書く気になったかというと、天才として名高いアインシュタイン博士が、
「私は頭が良いわけではない。ただ人よりも長い時間、問題と向き合うようにしているだけである」という言葉に出くわしたからだ。
とはいえ、常人をはるかに超える頭脳の持ち主だったに違いないのだが、もしも彼が、物理学の世界が大嫌いで、
すぐに考えることをやめていたとしたら、おそらく、相対性理論にたどり着くことはなかったろうと思う。
そしてもうひとつ、彼が偉業をなした理由として付け加えなければいけないのは、おそらく集中力にも優れていたという点である。
そのことをうかがわせる、こんな言葉を残しているからだ―「美人にキスしながら安全運転ができる人間は、キスに十分集中していない」。