ある委員会の報告書がほぼまとまった。当たり前のことだけれど、この種の委員会の、もっとも大切な作業は、
報告書そのものの内容ではなくて、そこに書き連ねられたひとつひとつの項目をどう実行に移すかだ。
報告書をまとめる作業が1の作業なら、実行に移すのは、100くらいの仕事だと考えておけばいい。
だから、会議の場をざっと見渡しても、委員のメンバーも事務局の人たちも、それを作り上げた直後から、
ほとんど実行をあきらめているようにさえ、私には見えた。
これは、こうした大人の委員会に限ったことではない。大学の講義で課題を与えて、実際に何かやらせても、
なんと工夫してカタチにしてくる学生は、数えるほどしかいない。プランニングと実践とでは、まさにケタ違いの差があるのだ。
この理由は、能力不足、経験不足、あるいは、意志薄弱とか、ヤル気がないとか、
あげればキリがないのかもしれないが、私が、その理由としてけっこう大きいと思っているのは、その人が、まずもって楽観的人物かどうか、だと思っている。
初めてのことなら、誰しも経験不足だし、むつかしい仕事に値する能力を本来的にそなえている人物などほとんどいない。
人間はみな、意志薄弱だし、つねにヤル気満々ではカラダが持たない。
だから、最初のとっかかりで、「これは、やり方次第で、何とかできるんじゃないか」と、
思えるかどうかがカギなのだ。お利口さんはこれができない。将棋の手を先々まで読むようにして、実行段階での困難を、始める前から並べすぎるからだろう。
最近、総合雑誌に特集されていた名言集にこんなのが載っていて、ノートに書き留めておいた。
インドの実業家で、ジンダルスチール社の創業者、プラカシュ・ジンダル氏の言葉である―
「他の人たちには壁しか見えない場所に、私はドアを見る」。いいなあ、この人。きっと明るく、いつも前向きな人だったのだろう、と思う。