尾賀商店 その1
尾賀商店 その1
八幡堀から歩いてもすぐ、永源町通り沿いにあるのが、ここ尾賀商店。最近、いろんな雑誌に紹介されているから、近江八幡に行ったら、ぜひ、と思っている人も多いに違いない。外からみてもそうだけれど、戸口を開けて中に入ってみると、なんだか時間がどこかでふっと、止まったような気分に。
家主の野垣さんが、祖父からゆずり受けたこの古民家は、築150年。そこに、アトリエ式のはんこ屋さん、カフェ、ギャラリーショップ、鉄工房の四店舗が、ずっと昔にタイムスリップしたまま 格子戸の向こうにたたずんでいる。
今回の尾賀商店の紹介は、お店に加えて、尾賀商店の店主でもある野垣さんや、それぞれのお店の方々にうかがったお話を中心に紹介していくことに。そして、みなさんから、私たち若い人へのメッセージももらった。
まずは、尾賀商店の店主、野垣さん。このお店を始めたきっかけは、今の場所の古民家である祖父の家が使えるようになり、若い人に使ってもらおうと思ったから。「建物、街並みを知ってもらい、興味をわいて使ってもらいたい。仲間との広がりがあって、見ているほうが楽しい」とのこと。
それぞれのお店の人たちには、「将来ここを出て、逆にここではできなかったことをやってほしい。ここでのこと、また何に関してもそうですが、通過点に過ぎないですよね」と。
そして、今の若い人たちに望むことは、「とりあえずやりたいことをやってそれを続けてほしい。そうすれば、好きになってくれる人がいて、それを応援してくれる人たちも増えくるようになる。お金も大事だけど、気に入ってくれる人がいるということが一番大切」という、メッセージをいただいた。
野垣さんの言われるとおり、ここに来て感じることは、4つのお店の不思議なハーモニー。こうした町家を使って、そこにいくつかのお店が入る例は少なくない。でも、それぞれが独立して店を構えている感じが、どうしても隠せない。それにくらべて、ここ尾賀商店は、みんな、お店の垣根を感じさせない。えっ、ここの陶器はどのお店のもの?といった感じなのだ・・・。
そして、戸口を入ってすぐ右手にあるのが、アトリエ式はんこ屋さんの「江湖庵(こうこあん)」。アトリエ式なので、作品とその制作作業風景をいっしょに見ることができる。
庵主の齋藤江湖さんいわく、作っているところも見てもらえるようにしたのは、「自分を表現できるから」。齋藤さんの作り出すはんこは、お客様との会話から生まれるという。
「その人がどんな人物かを知り、私の技術でお客様とともに一生寄り添っていけるものを制作したい」というのが齋藤さんの思い。「そのためにこの尾賀商店を選んだ。こういう風に自分を表現し、やりたいことをやらせてもらえるから」。
そして、若い人たちには「「いろいろ遠慮せずにやってみることが大事。興味を持ったらなんでもまずはやってみる。私もそうやってロンドンとベルリンではんこを路上で売りました。どんな形にせよ、それはきっと経験になるはず」と、熱いエールをもらった。
さて、今回の尾賀商店の紹介はここまで。カフェの「すいらん」、「咲sacra楽gallery(さくらぎゃらりー)」、そして、鉄工房の「Bond Yard」の紹介は、また次回に。ぜひ、お楽しみに。