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ものづくり

2014 / 08 / 16

近江の麻

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近江の麻

麻の糸、布、そして麻に関する情報もたくさん

近江の麻

最近、麻の特集を組んでいる女性誌やファッション誌がぐんと増えた。麻製品は、他のものに比べると少し高いけれど、やっぱり欲しくなる。だから、ちゃんと自分にあった麻製品を見つけることが大切に。近江は、麻製品の大産地だってこと、知っていました?

このあたり湖東一帯の麻織物の歴史はとても古い。その昔、鎌倉時代から、琵琶湖に注ぐ愛知川(えちがわ)の豊かな水と適度な湿気が、それを支えてきたのだ。江戸時代には、近江商人の活躍や彦根藩の振興でさらに発展し、安定した地場産業に。また、そのころから染めの技術も大きく進歩して、近江上布(おうみじょうふ)とよばれる独特の上品な絣(かすり)模様が生まれたのだ。

ひと口に麻といっても、いくつか種類がある。よく耳にするリネンは、主にヨーロッパやロシアで採れる、日本語で亜麻(あま)と呼ばれる種類。それとアジアを中心に栽培されるのが、ラミーと呼ばれる苧麻(ちょま)。また、昔から栽培されてきた大麻(たいま)と呼ばれる種類もあるが、これは最近では、衣料用にはあまり用いられなくなった。

リネンは素材として柔らく、肌着としても利用されたりすることも多い素材。それに比べて、ラミーは、やや固い手ざわり。その分、腰があり、吸湿性や発散性に優れている。また、そうした麻の種類だけでなく、織り方や、ウールや綿、葦(よし)など、他の素材を混ぜて織ることで、さわり心地、風合いなどもぜんぜん違ってくる。

「麻香」と「ファブリカ村」

ひと目でわかる「麻香」のお店の入口

ここで、麻製品の専門店「麻香(あさがお)」を紹介しよう。近江八幡市の中心部、伝統的な建物の保存地区に指定されている趣のあるまち並みの中に、大きく「麻」と書かれたのれんがかかったお店がそれだ。お洋服、ストール、布小物、生地など、麻織物の産地ならではの、上質な素材から作られたものが、たくさん並んでいる。

もうひとつ、麻製品に興味のある人に、耳寄りな情報を。それが、能登川町にあるファブリカ村。能登川は、近江八幡の少し北、びわ湖の南北でいえば、ちょうど中間あたりに位置する町。そして、ファブリカ村は、琵琶湖線の能登川駅から歩いても、十五分くらいのところにある。

昔の織物工場を改装したファブリカ村。

このステキな名前のショップを経営しているのは、代々、麻織物を作ってきた北川陽子さん。北川さんは、京都の芸術短大で勉強したあと、テキスタイルデザイナーとして家業を手伝い始めた。けれど、生活スタイルの変化や、海外からの安い麻製品の輸入増加で、仕事は次第に減少。そして、お父さんが亡くなった後は、工場も閉鎖せざるをえなくなったしまった。

ふつうなら、閉鎖された工場は、アパートや駐車場になってしまうのだけれど、北川さんは、当時の織物機械の設備の一部などをわざと残したりして、ロフト風の新たなコミュニティ空間に作り直したのだ。そして出来上がったのが、このファブリカ村。

このすてきな空間は、染めや織りの勉強会や体験会を催したり、花見や七夕などの季節に合わせて、音楽ライブや講演会などのイベントを開催する場としても利用されている。また、土日には、おしゃれなカフェも開かれていて、飲み物だけでなく、手作りのケーキやクッキーなどを楽しむこともできる。興味のある人は、滋賀観光のおりに、ちょっと足をのばしてみればと思う。