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旅歩き

2013 / 05 / 03

延暦寺

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延暦寺

延暦寺 根本中堂(東塔)延暦寺 根本中堂(東塔)

延暦寺

しばしば間違われるのだけれど、延暦寺とは、ひとつのお寺をさしているのではない。比叡山に点在する、東塔(とうどう)、西塔(さいとう)、横川(よかわ)という、三つの場所全体をさして、そう呼ぶ。また、それぞれの場所も、いくつかの堂塔でかたちづくられ、それらをひとまとめにして、延暦寺と呼ぶのだ。

一番良く知られているのは、国宝の根本中堂のある東塔。東塔は延暦寺発祥の地で、根本中堂の中堂とは、本堂という意味。そのため、ほとんどの人は、延暦寺といえば、根本中堂を思い浮かべることに。

左|杉木立の中にたたすずむ、にない堂(西塔) / 右|代表的天台様式建築の釈迦堂(西塔) / 下|開山の祖、最澄の墓所でもある浄土院左|杉木立の中にたたすずむ、にない堂(西塔) / 右|代表的天台様式建築の釈迦堂(西塔) / 下|開山の祖、最澄の墓所でもある浄土院

知られているように、延暦寺の開山の祖は、伝教大師最澄(768?822年)。比叡山のふもと坂本の地に生まれた最澄は、12才で仏門に入り、36才のとき、一年あまり中国に留学、帰国後、時の桓武天皇の庇護を受け、天台宗の祖として延暦寺を開いた。根本中堂は、その伝教大師の教えの中心をなすお堂なのだ。

その他、東塔には、学問修行の場であり、各宗派の宗祖がまつってある大講堂や、先祖回向の阿弥陀堂などのお堂がある。また、最澄の直筆をはじめ、仏像、仏画、美術工芸品など、数多くの国宝、重要文化財が見られる比叡山国宝殿があるのも、この東塔。

根本中堂の内部は、おごそかの一言。堂内は、下段、中段、上段の間にわかれ、一般の観光客が入れるのは、中段まで。そこから先の上段には、伝教大師自作の本尊である薬師如来がまつられている。ただし、秘仏になっていて、その姿を見ることはできない。本尊の脇には、日光、月光菩薩が、またそのまわりには、十二神将という天武たちが並び、本尊の薬師如来を守っている。日光菩薩は日中を、月光菩薩は夜を、そして、十二神将は、十二の時刻をたえずお守りするのが、その役割とか。

ここで見逃してはいけないのが、千二百年の間、その灯が絶やされたことがないという有名な不滅の法灯。「油断」という言葉の由来もここから来ているそうだ。つまり、油断すると、油を断ってしまう恐れがあるというわけ。そして、上段と中段の間の境は、約三メートルの深さに落ち込んだ空間がある。それだけ、薬師如来の上段に向かうのには難しさがあって、これこそ、人間の煩悩の谷とされている。

根本中堂を出ると、中堂の建物を背にして、正面に急な石段が見える。その石段を登ったところにあるのが文殊楼。急角度の石段は、登るのに尻込みしそうなくらいだが、中くらいまで登ったところで後ろを振り返ると、見事な根本中堂の建物を上方から眺めることができるので、ぜひおすすめ。

西塔は、東塔から少し離れたところにあり、東塔からのバス便もあるが、歩いても行けない距離ではない。その西塔には、修行の場である、にない堂、そして、本堂である釈迦堂、最澄のお墓のある浄土院などの堂塔がある。

西塔は、東塔とうって変わって、物静かな空間。ここまで足を伸ばす観光客は少なく、杉木立の間に点在するいくつかのお堂を巡っていると、これぞ比叡山という荘厳な雰囲気に包まれる。とくに、にない堂は、苔むした木立の中に、静かなたたずまいを見せる。にない堂からさらに奥へ進んだところの釈迦堂は、天台様式を代表する建物。もし、時間の余裕があるなら、ぜひ西塔まで足を伸ばしてみたい。

左|坂本からのケーブルからは、琵琶湖も望める / 中|ケーブルカー比叡山山頂駅 / 右|山頂ケーブルカー延暦寺駅から望む琵琶湖の絶景。近江大橋、沖島なども、くっきりと見える。左|ケーブルからは琵琶湖も望める / 中|ケーブルカー比叡山山頂駅 / 右|比叡山山頂駅から望む琵琶湖の絶景。近江大橋、沖島などもくっきりと見える。

延暦寺へのアクセスは、クルマならば、比叡山ドライブウェイを利用して、東塔、西塔、横川を効率よく回れる。電車を利用する場合は、京都市内からであれば、叡山電鉄で終点の八瀬比叡山口まで行って、そこから、ケーブルカーで山頂へ。

滋賀県側から行く場合は、滋賀県の坂本からケーブルカーに乗って、終着の延暦寺駅で降りると、そこから東塔まで歩いて七?八分。また、ふもと側の坂本のケーブルカー乗り場は、京阪線の坂本駅からなら歩いても行ける距離。JR線の比叡山坂本駅からは、ケーブルカー乗り場までバスが出ているのでそれを利用するのも便利。

天気の良い日には、ケーブルカー延暦寺駅の展望所から、琵琶湖がはっきり見える。湖に向かって右手前の大津付近から、対岸の草津、守山、近江八幡あたりまで、そして、近江富士といわれる三上山、琵琶湖に浮かぶ沖島までくっきりと見渡せる。