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旅歩き

2014 / 08 / 16

白鬚神社

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白鬚神社

白鬚神社

琵琶湖の西岸に沿う国道161号線を北に向かって走り、近江舞子、北小松を過ぎたあたり、
やがて湖の中に鳥居が立っているのが見えてくる。白鬚神社の湖中鳥居だ。水と鳥居といえば、
安芸の宮島、厳島神社の海に立つ鳥居が有名。一方、こちらの鳥居は、日本一の湖、
琵琶湖の湖面にその優雅な姿をのぞかせている。クルマで走り過ぎたのではわからないが、
湖北の水はかぎりなく美しい。透き通った水とその神秘的な立ち姿のアンサンブルは、宮島のそれとはちがった美しさがある。

白髯神社の湖中鳥居白髯神社の湖中鳥居

そして、湖と反対側に、道路をはさむようにして本殿のお社(やしろ)が建つ。
近江最古の神社とされる縁起は、今から約1900年前。まつられているのは、猿田彦命(サルタヒコノミコト)。
猿田彦命は、天照大神(アマテラスオオミカミ)の孫にあたる神様の瓊瓊杵命(ニニギノミコト)が、
この国を治めるために天から降りて来られたとき、地上の案内役をつとめた神様として知られている。
また、現在の社殿は、豊臣秀吉の子、秀頼によって建てられたもので、白鬚というその名前のとおり、古くから、延命長寿の神様としてあがめられて来た。

道路をはさんで建つ本殿道路をはさんで建つ本殿

ところで、なぜ湖の中に鳥居が?という疑問も浮かぶ。言い伝えによれば、その昔に突然、
湖の中から鳥居が現れたという説もあるが、それとは別に、湖上を行きかう船に乗った人々にとっては、
そのまま神社に参拝できるというありがたさから、という説もある。たしかに、船に乗って、逆に湖側から鳥居越しに眺める社殿はどんなものだろうか。

また、神社は、昔から名勝として知られていたところでもあり、この地を訪れた文人たちの歌碑もいくつか建っている。
源氏物語の作者として知られる紫式部もその一人だ。平安時代、越前国司として赴任する父の藤原為時に従って、
この地を通った時に詠んだもので、

みおの海に 網引く民の てまもなく
立ちゐにつけて 都恋しも

という歌がそれ。三尾が崎の浜辺で漁をしている人が、手を休めるひまもなく、
立ったりすわったりして網を引くその姿を見て、都を恋しく思った、という歌である。
本殿の裏の小高い地には、外宮、内宮などのお社もいくつか建っている。そこから湖に目をやると、
ボート漕ぎの訓練に励む小学生たちが見えた。やはり、琵琶湖には、夏が似合う。

社殿の裏の小高い丘から、本殿(左手前)、そして湖中鳥居(右手)を望む。手前は紫式部の歌碑社殿の裏の小高い丘から、本殿(左手前)、そして湖中鳥居(右手)を望む。手前は紫式部の歌碑